利休鼠(りきゅうねず)

抹茶

毎年、お正月三ヶ日に京都の実家を訪ねると、母がお抹茶を点ててくれます。甘い和菓子と、ほろ苦いお抹茶は、お互いを引き立て合う最高の相性ですね。京都育ちの私は、中学生の頃から茶道のお稽古に通っていました。お湯の沸く音や柄杓をコン!と置く音、そしていよいよ茶筅(ちゃせん)でお茶を点てる音がしてくるといった、静寂の中で聞こえる一連の音が大好きでした。もうすっかり作法は忘れてしましましたが、今でも抹茶を飲むと、凛とした気分になります。

茶道に興味がない方でも、千利休は、ご存知だと思います。安土桃山時代に、侘茶の世界を完成させた茶人です。私の育った鷹ヶ峰の周辺には、千利休にちなんだ大徳寺や光悦寺といったお寺もあって、親しみを感じています。抹茶といえば千利休というぐらい、今も昔も有名なので、色の名前になってしまいました。「利休鼠(りきゅうねず)」は抹茶っぽいグレイ、「利休茶(りきゅうちゃ)」は抹茶っぽい茶色、「利休白茶」は抹茶っぽいベージュのような色を指しています。

他にも、人の名前が色名になった例は結構あって、「路考茶(ろこうちゃ)」「璃寛茶(りかんちゃ)」「団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)」などが有名です。色彩検定にも登場する、江戸時代の人気歌舞伎役者の名前です。江戸時代の後期、贅沢禁止法で着物の色など細かく規制を設けられた庶民は、その範囲内で、茶色や鼠色の絶妙な色の違いを楽しみました。「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」と言われています。

それにしても、名前が色名になるなんて、すごい人達です。色名になるぐらい有名になるのは大変ですよね。自分の名前を勝手に色名にしちゃっても構いませんが、それ誰?ってことになると、何だか悲しいです。

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